《創業について》
私は20歳になるまで既製服しか着たことがない学生だった。
そんな私は洋服を着ることを楽しむ高校生時代に
いつしか自らの手で洋服を作ってみたいと思った。
そして、服飾の学校に進んだ。
しかし私は元々内向きで、自分に自信がなかった。
そのため、行動もできない性格で自分を表現することが得意ではなかった。
そんな私が少しずつ学校に慣れ始め、今後について考えるようになった頃
洋服の可能性について疑問に思うことがあった。
それは、私は何のために洋服を作っていくべきなのかということ。
自分の中でそれがわからないまま途方に暮れ
しまいには存在意義など考え始めていた。
その頃、メンズ科に進級し仕立てを学び始めた。
そこで、手間と時間を全て費やし
初めて自分に仕立てた洋服を着た。
その時、自分の体に馴染む
何とも言えない感動と高揚感を感じた。
私の体に吸い付き、良い塩梅の丈感、芯の硬さ、
絶妙なシェイプのライン等にとても感動した。
いくら考えても消えなかった悩み事や不安、
心配が世界にたったひとつだけの洋服で払拭された。
むしろ胸いっぱいの自信と高揚感により
気にもしないほど前向きになる自分が
今ここにあるという感覚があった。
その時、私の中で初めて
洋服とは何のためにあるのかがわかった。
テイラーでは、上質な脊廣を味わっていただくため
温故知新を大切にしっかりとした技術と知識で
皆さま一人一人に合わせ、洋服を丸縫いと言われる
古来の最初から最後まで
ひとりの職人が仕立てるという製法をモットーに
今日もひと針を大切に仕立てております。
後書き
〈なぜ現代の技術だけではなく昔の技術にも目を向けるのか〉
これまで人が培ってきた経験による技術、歴史は
既得権益や世間体として残ったのではなく
人に有益となるものを与えると証明され続けたからこそ残ったもの。
戦後の日本の量産の時代により、洋服の製図法は専門性を弱くし
多くの人が扱えるように簡略化が進んだ。
多くの人に豊かさを感じてもらうため
大変素晴らしい時代になったのだが
その裏では確かな技術と知識が失われていく背景がある。
本格的な技術、知識が背廣の質を高め、
着る人に与える影響も大きなものになる。
明治維新以降、背廣というものが入ってきて以来
日本の職人による試行や研究、
切磋琢磨し磨かれてきた技術を学んでいる。
私は、今の時代だからこそ
その背景にある先人の残した技術、知識を深堀りそして残したい。
戦前から現在に続く日本技術の集大成となる
仕立てをしたいと思い、弊店『テイラー』を作りました。
